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脊髄小脳変性症は遺伝するの?

脊髄小脳変性症の遺伝について説明する鍼灸師|院長 吉池 弘明

●更新 2026.07.22

脊髄小脳変性症は遺伝するの?|子供・孫への遺伝と、遺伝子検査のこと

脊髄小脳変性症の遺伝について説明するイメージ

私は脊髄小脳変性症です。娘には子供、つまり私の孫がいますが、この子にもいつか同じ病気が現れてしまうのではないかと、心配でたまりません。

自分のせいで娘や孫に迷惑をかけてしまうようで、申し訳なくて眠れない夜もあります。本当のところを、正直に教えていただけないでしょうか。

長野県 M.K.さん

脊髄小脳変性症には、遺伝するものと、遺伝しないものがあります。まずはそれを正確に知ることが、不安と向き合う第一歩になります。

このページでは、子・孫・ご兄弟への遺伝の確率、遺伝子検査のこと、そして「ご自身のせいではない」ということを、できるだけ正直にお伝えします。

院長 吉池 弘明

  • 脊髄小脳変性症は遺伝する病気ですか

    「遺伝性」と「孤発性(遺伝しない)」がある

    脊髄小脳変性症は、大きく「遺伝性」と「孤発性」に分けられます。遺伝性は、原因となる遺伝子の変化を親から受け継ぐタイプです。孤発性は、血縁者に同じ病気の方がおらず、遺伝しないタイプです。多系統萎縮症(MSA)や皮質性小脳萎縮症(CCA)は、原則として孤発性(遺伝しない)タイプとされています。

    孤発性の割合は小さくない、という事実

    脊髄小脳変性症は、遺伝性よりも孤発性の方が多く、全体のおよそ7割を占めるとされています。血縁者に同じ病気の方がいなければ、遺伝性である可能性は低いといえます。

    ただし、血縁者に同じ病気の方がいないように見えても、実際に遺伝子検査をすると、約10〜20%は遺伝性であったと判明することがあります。理由としては、親が発症する前に亡くなっていた場合、症状が軽く気づかれていなかった場合(不完全浸透)、新たに生じた遺伝子の変化(突然変異)である場合、両親がともに変化を持つ潜性遺伝のタイプだった場合、離婚や死別・養子縁組などで家族の情報が十分に伝わっていなかった場合などが考えられます。

    「血縁者に他にいないから大丈夫」と決めつけることはできませんが、だからといって過度に不安になる必要もありません。気になる場合は、後ほどご紹介する遺伝カウンセリングという専門の窓口にご相談いただくことができます。

    遺伝性でも、必ず発症・遺伝するとは限らない

    原因となる遺伝子の変化を受け継いでも、必ず発症するとは限りません。これを「浸透率」といいます。マシャド・ジョセフ病(SCA3型)など一部の型では、変異を受け継ぐとほぼ生涯のどこかで発症するとされていますが、SCA8型など一部の型では、病的な遺伝子の変化を持っていても発症しないまま生涯を終える方が少なくないことも報告されています。型によって発症のしやすさが異なるため、「ご自身の家系は必ずこうなる」と一律に決めつけることはできません。

  • 子供・孫・兄弟に遺伝しますか

    遺伝性の場合の受け継がれ方

    遺伝性の脊髄小脳変性症の多くは、「常染色体顕性遺伝」というかたちで受け継がれます。これは、親が持つ原因の遺伝子の変化が、性別に関係なく2分の1(50%)の確率でお子様に伝わる、という遺伝の仕方です。SCA3型・SCA6型・SCA31型・DRPLAなど、代表的な遺伝性の型は、いずれもこの常染色体顕性遺伝です。

    これとは別に、ごくまれに「常染色体潜性遺伝」という形式もあり、この場合は両親がともに原因となる遺伝子の変化を持っている(保因者である)場合に限り、お子様が4分の1(25%)の確率で発症します。

    孫の世代について

    お孫さんへの遺伝について、最も気にされる方が多い部分だと思いますので、場合を分けて正確にお伝えします。

    まず、間の世代にあたるお子様が、原因となる遺伝子の変化を受け継いでいない場合、お孫さんへの遺伝の確率は0%です。遺伝子の変化は、受け継がれなかった時点でそこから先には伝わりません。

    一方で、お子様が遺伝子の変化を受け継いでいても、まだ症状が現れていない場合(未発症保因者)は、お孫さんへの遺伝の確率は変わらず50%です。「お子様がまだ発症していないから、お孫さんは大丈夫」というわけではありませんので、この点は誤解のないようお伝えします。

    お子様がご自身の遺伝子の状態を知りたい場合は、後ほどご紹介する遺伝子検査や、遺伝カウンセリングという専門の窓口にご相談いただくことができます。

    兄弟間について

    ご兄弟についても、基本的な考え方は同じです。片方の親が常染色体顕性遺伝のタイプを発症している場合、それぞれのご兄弟に、独立してそれぞれ50%の確率で遺伝子の変化が受け継がれます。お一人が受け継がなかったからといって、他のご兄弟も受け継がないとは限りません。常染色体潜性遺伝のタイプで両親がともに保因者の場合は、それぞれのご兄弟に25%の確率です。

    「遺伝する=必ず発症する」ではないこと

    前の章でもお伝えしたとおり、遺伝子の変化を受け継いだからといって、必ず発症するとは限りません(浸透率)。型によって発症のしやすさが異なりますので、「ご自身の家系は必ずこうなる」と一律に決めつけることはできません。

  • 脊髄小脳変性症は優性遺伝ですか/男女差はありますか

    多くの遺伝性の型は常染色体顕性遺伝(旧「優性遺伝」)

    「優性遺伝」という呼び方は現在の医学では「常染色体顕性遺伝」と呼ばれています。SCA3型・SCA6型・SCA31型・DRPLAなど、代表的な遺伝性の型はいずれもこの常染色体顕性遺伝にあたります。

    男女で遺伝・発症に基本的な差はない

    常染色体顕性遺伝・常染色体潜性遺伝は、男女に関係なく等しく遺伝し、発症します。ごくまれに、性染色体を通じて遺伝するX連鎖性という形式のタイプもありますが、これは非常にまれで、その場合は基本的に男性のみに発症します。

  • 何歳ごろ発症しますか(遺伝性の場合)

    型によって発症年齢が異なる

    遺伝性のタイプは、型によって発症しやすい年齢に幅があります。詳しくはSCA-3(マシャド・ジョセフ病)SCA-6SCA-31もあわせてご覧ください。

    世代によって発症年齢が早まることがある(表現促進現象)

    世代を経るごとに、原因となる遺伝子の変化がわずかに大きくなり、次の世代では発症年齢が若くなったり、進行が早くなったりすることがあります。これを「表現促進現象」といい、特にマシャド・ジョセフ病(SCA3型)や歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)などの型で、父親から受け継いだ場合に顕著に見られるとされています。一方でSCA6型は、原因となる遺伝子の変化の性質上、世代を経てもこうした若年化がほとんど起こらないとされています。型によって傾向が異なりますので、詳しくは主治医や遺伝カウンセリングでご確認ください。進行の詳しい経過は脊髄小脳変性症の余命と進行もあわせてご覧ください。

  • 遺伝子検査について知っておきたいこと

    遺伝子検査でわかること・わからないこと

    遺伝子検査では、血液からDNAを取り出して調べることで、原因となる遺伝子の変化の型を特定し、診断を確定することができます。リピートの数から、進行の速さや今後現れやすい症状を、ある程度推定できることもあります。

    一方で、型が特定できたとしても、根本的に治す治療法があるわけではありません。また、家系にはっきりと遺伝性の病歴があるように見える場合でも、実際に検査をすると、約10〜20%は原因となる遺伝子の変化を特定できないことがあります。

    費用・保険適用の目安

    遺伝子検査は、現在のところ健康保険の対象にはなっていません。具体的な費用は実施する医療機関によって異なりますので、受診される医療機関に直接ご確認ください。

    「発症前診断」という選択の重さ

    発症前診断とは、まだ症状のない血縁者の方に対して、将来発症する可能性のある遺伝子の変化を持っているかどうかを調べる検査です。この検査は、次のような点を踏まえ、極めて慎重に行われるべきものとされています。

    ・書面でのインフォームドコンセントが必須であること
    ・20歳以上の成人のみが対象で、未成年の方には行われないこと
    ・検査を受けるかどうか、また結果を知るかどうかは、本人の自由な意思にゆだねられるべきであること(知る権利だけでなく、知らないでいる権利もあります)
    ・検査の前後で、繰り返し遺伝カウンセリングを受けることが前提となっていること
    ・結果が陽性だった場合の心理的なケア体制が、あらかじめ整っていることが望ましいとされていること

    現状では根本的に治す治療法がないことから、こうした検査をご家族・ご親族全員に安易に受けていただくことは避けるべきであり、極めて慎重な判断が必要とされています。当院で検査や判定を行うことはできませんので、発症前診断をご検討の場合は、必ず医療機関の遺伝カウンセリングにご相談ください。

    遺伝カウンセリングという専門の窓口があること

    遺伝カウンセリングは、遺伝に関する正しい情報を提供しながら、ご本人やご家族の不安に寄り添い、今後どうするかをご自身で決めていけるよう支援する医療行為です。大学病院などの遺伝子診療部門(遺伝相談外来・遺伝カウンセリング室)で、臨床遺伝専門医や認定遺伝カウンセラーを中心とした専門のチームが対応しています。結婚や出産など、家族計画に関するご相談も対象になります。お近くの窓口については都道府県・指定都市難病相談支援センター一覧もご参照ください。

  • 「遺伝を予防する方法はありますか」という問いに

    遺伝そのものを防ぐ方法は現時点でない、という誠実な事実

    大変つらいことですが、遺伝そのものを防ぐ方法は、現時点ではありません。この点を、誠実にお伝えします。

    それでも「発症後にできること」はある

    ただし、遺伝を防ぐことができなくても、発症した後にできることはあります。体の機能に働きかける選択肢について、脊髄小脳変性症は治る確率がある?でご紹介しています。

    家族計画に関する相談も遺伝カウンセリングで

    結婚や出産など、将来のご家族計画についてのご相談も、遺伝カウンセリングで受け付けています。なお、成人になってから発症するようなタイプについては、出生前診断は原則として認められていません。おひとりで抱え込まず、まずは専門の窓口にご相談ください。

  • 遺伝が心配なあなたへ/診断されたご本人へ

    まだ発症していないが心配なご家族へ

    血縁者に脊髄小脳変性症の方がいて心配されている場合でも、孤発性である可能性、あるいは遺伝性でも発症しない可能性は十分にあります。心配なことがあれば、おひとりで抱え込まず、まずは遺伝カウンセリングという専門の窓口にご相談ください。

    遺伝性と診断されたご本人へ

    遺伝性のタイプだと診断された場合、「自分のせいで子や孫に」と感じてしまう方も少なくありません。ですが、遺伝性の病気を持って生まれたことは、誰のせいでもありません。ご自身を責めず、これから何ができるかに目を向けていただければと思います。

  • 診断を受けて、これからできること

    遺伝性であっても孤発性であっても、診断を受けた後には、経過観察のほかに体の機能へ働きかける選択肢があります。

    詳しくは脊髄小脳変性症は治る確率がある?もあわせてご覧ください。

    ご相談はこちら

  • よくある質問

    脊髄小脳変性症は遺伝しますか?

    大きく分けて、原因となる遺伝子の変化を受け継ぐ「遺伝性」と、はっきりした原因がわからない「孤発性」があります。孤発性は全体のおよそ7割を占めるとされ、遺伝性はご自身やご家族が思うより少ない可能性もあります。

    子供に遺伝しますか?

    型によって異なりますが、多くの遺伝性のタイプ(常染色体顕性遺伝)では、お子様への遺伝の確率は50%です。両親がともに原因となる遺伝子を持つまれなタイプ(常染色体潜性遺伝)では25%です。

    孫に遺伝しますか?

    お子様が原因となる遺伝子の変化を受け継いでいなければ、お孫さんへの確率は0%です。お子様が変化を受け継いでいても発症していない場合は、お孫さんへは変わらず50%です。詳しくは本文でご説明しています。

    母親(親)から遺伝しますか?

    遺伝性のタイプであれば、母親・父親のどちらから受け継いでも遺伝の確率に違いはありません。常染色体顕性遺伝は男女に関係なく50%の確率で受け継がれます。

    兄弟に遺伝しますか?

    片方の親が常染色体顕性遺伝のタイプを発症している場合、それぞれのご兄弟に独立して50%の確率で遺伝子の変化が受け継がれます。お一人が受け継がなかったからといって、他のご兄弟も受け継がないとは限りません。

    優性遺伝ですか?

    遺伝性の脊髄小脳変性症の多くは、常染色体顕性遺伝(かつての「優性遺伝」)というかたちで受け継がれます。親から子へ50%の確率で伝わります。

    男女差はありますか?

    常染色体顕性・潜性遺伝は、男女に関係なく等しく遺伝・発症します。ごくまれにX連鎖性という遺伝形式のタイプもあり、その場合は基本的に男性のみに発症します。

    遺伝子検査はいくらかかりますか? どこで受けられますか?

    遺伝子検査は健康保険の対象外で、費用は実施施設によって異なります。具体的な金額は受診される医療機関に直接ご確認ください。大学病院の神経内科などで実施されており、詳しくは難病相談支援センターにもご相談いただけます。

    遺伝を予防する方法はありますか?

    遺伝そのものを防ぐ方法は、現時点ではありません。ただし、発症を防げなくても、発症した後にできることはあります。おひとりで抱え込まず、遺伝カウンセリングという専門の窓口にもご相談ください。

  • 院長 吉池 弘明

    私が書きました

    院長 吉池 弘明

    脊髄小脳変性症の治療経験40年。

    医療用サーモグラフィを独自に導入し、のべ7万2000人の患者さんに鍼灸治療を行ってきた。

    サーモグラフィを用いた神経難病治療を専門に行い、自律神経・ストレス状態をデータから読み解き、患者様ひとりひとりに合わせた治療を提供している。

  • 参考文献

脊髄小脳変性症の鍼灸外来

お医者様とは違った角度から検査をして鍼治療に活かしています。

脊髄小脳変性症の治療に取り組む 長野県 森上針灸整骨院スタッフ集合写真

西洋医学的に治療法が確立されていないような難病や、保険医療で良くならなかった患者様、お薬の副作用でかえってお体を壊してしまった患者様を専門に治療する鍼灸整骨院です。お医者様とは違った角度から検査をして、鍼治療をしています。初診では十分な時間を取って患者様の問診をするので、お困りのことがあったらご相談ください。