経過観察の他に、できることを探している方へ

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脊髄小脳変性症の原因と初期症状

脊髄小脳変性症の原因について説明する鍼灸師|院長 吉池 弘明

●更新 2026.07.22

脊髄小脳変性症の原因と初期症状|最初のサインと発症のしくみ

脊髄小脳変性症の原因と初期症状について説明するイメージ

最近、母の歩き方がおかしいことに気づきました。まっすぐ歩けずふらついたり、以前より言葉が聞き取りにくくなっている気もします。

インターネットで調べると「脊髄小脳変性症」という病名が出てきて、不安になっています。どんなことが原因で起こる病気なのか、教えていただけないでしょうか。

長野県 K.S.さん

脊髄小脳変性症は、小脳や脊髄の神経細胞が少しずつ働きを失っていく病気です。原因には、生まれつきの遺伝子によるものと、はっきりした原因がわからないものとがあります。

このページでは、脊髄小脳変性症の原因と、最初に現れやすい症状について解説します。生活習慣やストレスが原因になったわけではありませんので、ご自身を責めすぎないでください。

院長 吉池 弘明

  • 脊髄小脳変性症の原因

    小脳・脳幹・脊髄の神経細胞が少しずつ減っていく

    脊髄小脳変性症は、体のバランスや細かい動きをコントロールしている小脳や、小脳とつながる脳幹・脊髄の神経細胞が、少しずつ働きを失っていく病気の総称です。国内での有病率は人口10万人あたり18.6人と報告されています。

    大きく分けて「孤発性(遺伝しない)」と「遺伝性」がある

    脊髄小脳変性症は、大きく「孤発性」と「遺伝性」の2つに分けられます。孤発性は血縁者に同じ病気の方がおらず、はっきりした原因がわからないまま発症するタイプです。遺伝性は、原因となる遺伝子の変化が親から受け継がれるタイプです。

    それぞれのおおよその割合

    国内の報告では、孤発性が約67%(およそ3分の2)、遺伝性が約29〜30%(およそ3割)とされています。遺伝性のうち9割以上は常染色体顕性遺伝(親のどちらかが持つ変化が子に受け継がれる形)で、常染色体潜性遺伝(両親から変化を受け継ぐことで発症する形)は国内では非常にまれです。このほか、遺伝性の脊髄小脳変性症に近い病気として、家族性痙性対麻痺というタイプも一部にあります。

    孤発性の内訳では、多系統萎縮症(MSA)が約3分の2、皮質性小脳萎縮症(CCA)が約3分の1を占めるとされています。

  • ストレスや生活習慣は原因になりますか

    ストレス・生活習慣が直接の原因ではない

    ストレスや特定の食事、日々の生活習慣そのものが、脊髄小脳変性症の直接の原因になるという明確な医学的根拠は、現在のところありません。孤発性のタイプ(特に多系統萎縮症)については、「生まれ持った体質に、環境の要因が複雑に影響し合っている」という仮説が考えられていますが、まだ研究段階であり、その体質がどのようなものかも分かっていません。

    過去には農薬との関連も指摘されたことがありますが、ヨーロッパでの調査では、有機溶剤やその他の毒性物質とあわせて、関連は否定されています。

    「何かをしたから発症した」わけではない

    「自分の生活のどこかに原因があったのではないか」とご自身を責めてしまう方が少なくありませんが、そのような明確な原因は見つかっていません。生まれ持った遺伝子の変化によるものであっても、はっきりした原因がわからないものであっても、どちらもご本人やご家族の生活習慣が引き起こしたものではありません。

  • なぜ発症するのか——発症のしくみ

    遺伝性:原因となる遺伝子の変化が受け継がれる

    遺伝性の脊髄小脳変性症の多くは、「トリプレットリピート病」と呼ばれるしくみで起こります。遺伝子の中にある特定の並び(塩基配列)の繰り返し(リピート)が、生まれつき通常の範囲を大きく超えて増えてしまうタイプです。

    このうち、遺伝子のタンパク質を作る部分にリピートが増えるタイプ(ポリグルタミン病)では、異常に長くなったタンパク質が溶けにくくなって神経細胞の中に蓄積し、細胞の働きを妨げていきます。一方、タンパク質を作らない部分にリピートが増えるタイプでは、異常なRNA自体が細胞の中に蓄積して、他の様々な働きを妨げると考えられています。型によってどちらのしくみで起こるかが異なります。

    こうした変化は生まれつき体に備わっているものですが、症状が現れるまでには長い時間がかかります。異常なタンパク質やRNAが少しずつ蓄積していく過程で、本来それらを片づけるはずの細胞内の掃除のしくみ自体が働きにくくなっていくという悪循環が生じ、この変化が数十年という長い時間をかけて進むため、中高年になってから症状として現れてくると考えられています。加齢そのもので急に掃除機能が衰える、という単純な話ではありません。

    遺伝性の詳しい型や遺伝の仕方については、脊髄小脳変性症は遺伝する?で詳しくご紹介しています。

    孤発性:はっきりした原因がわからないことが多い

    孤発性のうち多くを占める多系統萎縮症(MSA)では、脳の中の神経を支える細胞(グリア細胞)に、α-シヌクレインというタンパク質が蓄積した構造が見られることが分かっています。特定の遺伝子の変化が関わっている可能性も指摘されていますが、なぜこの蓄積が起こるのかは、まだはっきりとは解明されていません。

    もうひとつの孤発性のタイプである皮質性小脳萎縮症(CCA)では、小脳の表面(皮質)にほぼ限られた萎縮が特徴で、小脳の神経細胞が変性・脱落していきます。こちらも根本的な原因の解明は、あまり進んでいないのが実情です。

    孤発性はこのように、まだわかっていないことも多い分野です。原因が特定できていないからこそ、「何か思い当たることがあったのではないか」とご自身の生活を振り返って責めてしまう方がおられますが、そうではないということを、あらためてお伝えしておきたいと思います。

  • 最初に現れやすい初期症状・前兆

    歩くときのふらつき・バランスの崩れ

    多くの患者さんで、「歩行時のふらつき」が最初に気づかれる症状です。「雲の上を歩いているようにふわふわする」「立ち止まったり方向を変えたりするとよろめく」「自転車が以前よりふらついて乗りにくくなった」「階段の上り下りが怖く感じる」といった訴えで気づかれることがよくあります。

    数か月から数年かけてこの歩行の不安定さが進み、そこに手元のふらつき(字が書きにくい・箸が使いづらいなど)や、話しづらさが重なっていくことが多いです。なお多系統萎縮症では、約3割弱の方で、歩行のふらつきに先立って頻尿・尿失禁などの排尿障害や、立ちくらみ(起立性低血圧)が現れることがあります。

    ろれつが回りにくい・話しづらい

    初期には、一言一言がはっきりしない、お酒に酔ったような話し方になる、といった変化が見られます。ご本人よりも先に、電話で「聞き返される」ことが増えて気づく、というケースも少なくありません。進行すると、言葉が途切れ途切れになったり、急に大きな声になったりすることもあります。

    手先の細かい作業のしにくさ・字の乱れ

    歩行の不安定さが進むのと前後して、字を書く・箸を使うといった細かい手の動きがしにくくなることも、初期に気づかれやすい変化のひとつです。

    疲れやすさ・その他の初期の自覚

    「疲れやすさ」も、初期症状・随伴症状として十分にありうる訴えです。長く病気とつきあっている患者さんへのアンケートでも、「最も困っている症状」の上位に挙げられています。下肢がつっぱりやすいタイプでは、「歩くと両足がつっぱってすぐ疲れてしまう」という形で、早い段階から自覚されることがあります。

    認知機能への影響は、型によって大きく異なります

    「もの忘れが増えた」「認知症では」というご心配の声もありますが、認知機能への影響の出方は病型によって大きく異なるため、一括りにはできません。多系統萎縮症では、発症から3年以内に認知症が現れることは通常なく、むしろその場合は他の病気を疑う目安のひとつとされています。皮質性小脳萎縮症でも、初期から知能の低下がみられることは通常ありません。一方で、一部の遺伝性のタイプ(40歳以上で発症する歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症〈DRPLA〉や、SCA17という型など)では、初期から性格の変化や認知機能の障害が中心的な症状として現れることがあります。純粋に小脳の症状が中心となるタイプ(SCA6・SCA31など)では、全般的な知能や記憶力は良く保たれますが、物事を柔軟に考えたり、順序立てて判断したりする力(遂行機能)が、軽度に低下することはありえます。

    このように、認知機能への影響の有無や程度は型によって大きく異なるため、心配な場合は自己判断をせず、医療機関でご相談ください。進行に伴って現れる症状については、脊髄小脳変性症の余命と進行で詳しくご紹介しています。

    〈院長資料待ち:最初に相談されやすい・家族が最初に気づいた初期症状の実感〉

  • こんなサインに気づいたら——受診と調べ方

    まず受診すべき診療科(神経内科)

    歩き方の異変や話しづらさなど、ここまでご紹介したような症状に気づいたら、まずは神経内科(脳神経内科)を受診してください。お子さんでの発症が疑われる場合は、小児神経を専門とする医師への相談が望ましいとされています。

    どうやってわかるのか・診断までの流れ

    診断は、問診や神経学的な診察(家系図の確認、飲酒歴の確認を含みます)を基本に、脳や脊髄のMRI検査、血液・尿検査などを組み合わせて医療機関で行われます。血液・尿検査では、ビタミンB1・B12・E、甲状腺ホルモンなどを調べ、他の原因による症状でないかを確認します。必要に応じて髄液検査や、自律神経・膀胱機能の検査、神経眼科・耳鼻科的な検査なども行われます。

    なお、問診で飲酒歴をお伺いするのは、飲酒が原因かどうかを調べるためではありません。長期にわたる大量の飲酒によって「アルコール性小脳変性症」という別の病気が起こることがあり、脊髄小脳変性症(特に皮質性小脳萎縮症)と症状が似ているため、これを除外するために確認しています。飲酒そのものが脊髄小脳変性症の原因になるわけではありません。

    特に皮質性小脳萎縮症は、アルコール・特定の薬剤・ビタミン欠乏・甲状腺機能低下症・自己免疫性の病気など、同じように小脳の症状を起こしうる他の病気をひとつずつ除外していった上で、初めて診断がつく病気です。原因を探すための検査というより、「治療できる可能性のある似た病気ではないか」を確かめるための検査だとご理解いただくとよいかもしれません。

    血縁者に同じ病気の方がいるなど遺伝性が疑われる場合は、遺伝子検査が行われることもあります。この検査は健康保険の対象外で、発症していないご家族にも重大な影響を及ぼす可能性があるため、事前に遺伝カウンセリングを受けることが勧められています。

    確定診断までには、設備の整った神経内科で2〜4週間程度の入院検査が行われるのが一般的です。ただし、発症したばかりで症状がそろっていない場合や、典型的でない経過をたどる場合には、診断が確定するまでに5年以上、時には10年以上を要したという報告もあります。診断に時間がかかることがあるのは珍しいことではありません。

    発症しやすい年齢の目安

    孤発性のタイプは、50代以降の中高年で発症することが多く、多系統萎縮症は平均55〜58歳ごろ、皮質性小脳萎縮症は平均55〜56歳ごろの発症が報告されています。

    遺伝性のタイプは型によって幅があり、たとえばSCA3型は20〜40代(平均35歳ごろ)、SCA6型は40〜50代、SCA31型は50代後半〜70代と、比較的高齢での発症が中心です。歯状核赤核淡蒼球ルイ体萎縮症(DRPLA)は小児期から50代までと幅が広く、20歳未満で発症しててんかんが主な症状となる若年型と、40歳以上で発症し小脳症状が主体となる遅発成人型に大きく分かれます。まれな常染色体潜性遺伝のタイプでは、幼少期から青年期(20歳以下)での発症が特徴です。

    「様子を見よう」で時間が過ぎてしまう前に

    ここでご紹介した症状は、あくまで受診を考えるうえでの目安です。ご自身やご家族の状態がこれに当てはまるかどうかを自己判断で決めつけず、気になる症状があれば、まずは神経内科を受診してご相談ください。診断の確定には時間がかかることもありますが、早めに専門医とつながっておくことは、その後の見通しを立てるうえでも大切です。

  • 原因や症状がわかってきたら、次に気になること

    進行や余命が心配な方へ

    「これからどう進んでいくのか」「余命はどれくらいか」といった不安をお持ちの方には、型ごとの違いも含めて詳しくご紹介している脊髄小脳変性症の余命と進行をご覧ください。

    遺伝が心配な方へ

    「子供や孫に遺伝するのでは」というご不安をお持ちの方には、脊髄小脳変性症は遺伝する?で、遺伝の仕組みや確率について詳しくご説明しています。

    治療・できることを知りたい方へ

    現在受けられる治療や新薬の状況を知りたい方は脊髄小脳変性症の治療法・最新治療を、「治る可能性はあるのか」「変化はあるのか」を知りたい方は治る確率をご覧ください。

  • 進行を見守るだけでなく、できることもあります

    診断を受けたばかりで、これから何をすればいいのかわからないという方も多いと思います。経過観察を続ける以外にも、体の機能に働きかける選択肢があることを知っていただければと思います。

    詳しくは脊髄小脳変性症は治る確率がある?もあわせてご覧ください。

    ご相談はこちら

  • よくある質問

    脊髄小脳変性症の原因は何ですか?

    大きく分けて、原因となる遺伝子の変化を受け継ぐ「遺伝性」と、はっきりした原因がわからない「孤発性」があります。国内では孤発性が約7割、遺伝性が約3割とされています。どちらもご本人やご家族の生活習慣が引き起こしたものではありません。

    ストレスや生活習慣は関係ありますか?

    ストレスや特定の食事、生活習慣そのものが直接の原因になるという明確な医学的根拠はありません。過去に指摘された農薬との関連も、海外の調査で否定されています。ご自身を責める必要はありません。

    初期症状・最初の症状は何ですか?

    多くの方で、歩行時のふらつきが最初に気づかれる症状です。そこに、ろれつが回りにくい、手先の細かい作業がしにくい、疲れやすい、といった症状が重なっていくことが多く見られます。

    予兆・前兆はありますか?

    はっきりした予兆というよりも、「歩き方がおかしい」「呂律が回りにくい」「以前より疲れやすい」といった、日常のちょっとした変化として気づかれることが多いです。

    どうやってわかりますか? チェック方法は?

    ご自身での判断はせず、気になる症状があれば神経内科を受診することが確実な方法です。診察や画像検査、血液検査などを組み合わせて医療機関で診断されます。

    何歳ごろ発症しますか?

    孤発性は50代以降の中高年での発症が多く、遺伝性は型によって幅があり、10代から70代まで様々です。詳しくは本文の「発症しやすい年齢の目安」をご覧ください。

    何科を受診すればいいですか?

    神経内科(脳神経内科)を受診してください。お子さんでの発症が疑われる場合は、小児神経を専門とする医師への相談が望ましいとされています。

    遺伝しますか?

    遺伝性のタイプであれば遺伝しますが、孤発性であれば通常は遺伝しません。ご自身の型が遺伝性かどうか、遺伝の確率については脊髄小脳変性症は遺伝する?で詳しくご説明しています。

  • 院長 吉池 弘明

    私が書きました

    院長 吉池 弘明

    脊髄小脳変性症の治療経験40年。

    医療用サーモグラフィを独自に導入し、のべ7万2000人の患者さんに鍼灸治療を行ってきた。

    サーモグラフィを用いた神経難病治療を専門に行い、自律神経・ストレス状態をデータから読み解き、患者様ひとりひとりに合わせた治療を提供している。

  • 参考文献

脊髄小脳変性症の鍼灸外来

お医者様とは違った角度から検査をして鍼治療に活かしています。

脊髄小脳変性症の治療に取り組む 長野県 森上針灸整骨院スタッフ集合写真

西洋医学的に治療法が確立されていないような難病や、保険医療で良くならなかった患者様、お薬の副作用でかえってお体を壊してしまった患者様を専門に治療する鍼灸整骨院です。お医者様とは違った角度から検査をして、鍼治療をしています。初診では十分な時間を取って患者様の問診をするので、お困りのことがあったらご相談ください。