進行が緩やかな型(多くの脊髄小脳変性症)
小脳の症状が中心となる純粋小脳型は、全体として経過がゆっくりで、生命予後も比較的良好とされています。たとえばSCA6型は進行が非常に緩やかで、生命予後は良好、寿命を全うされる方が多いと報告されています。SCA31型も進行は非常に緩やかで、生命予後への影響は少ないとされています。CCA(皮質性小脳萎縮症)のうち、小脳以外の症状を伴わない純粋なタイプでは、平均生存期間が20.7年という報告もあります(小脳以外の症状も合併するタイプでは平均7.7年)。
こうした型では、診断時に「進行は緩やかです」「寿命は通常の方とほとんど変わりません」と説明されることがあります。それ自体は医学的に誤りではありませんが、この説明が「だから何もしなくていい」という受け止め方につながってしまうことがあります。この点については、後の見出しであらためて詳しくお話しします。
若い頃に発症する型(マシャド・ジョセフ病など)は後半戦が長い
SCA3型(マシャド・ジョセフ病)は、平均の罹病期間(発症から亡くなるまでの期間)が14年以上と報告されています。進行の速さは、後述する多系統萎縮症のおよそ半分程度とされ、車椅子が必要になるまでの期間は平均10.7〜11.7年という報告があります。発症年齢が比較的若いことが多いため、結果として「後半戦」を過ごす期間が長くなりやすい型だといえます。
多系統萎縮症は進行が速い
多系統萎縮症(MSA)は、脊髄小脳変性症の中でも進行が速いタイプです。平均生存期間は9年前後(7〜10年)と報告されています。杖や歩行器が必要になるまでの期間は発症から約3年で約半数の方に、車椅子が必要になるまでは約5年(自律神経症状が重い場合は中央値3.5年)、寝たきりの状態になるまでは約10年(6〜8年、7年とする報告もあります)とされています。詳しくは多系統萎縮症(MSA)もあわせてご覧ください。
SARAスコアで見た年間の進行の目安
運動失調の重症度を数値化するSARAスコア(満点40点、点数が高いほど重症)を用いた研究では、1年あたりの悪化の程度が病型別に報告されています。SCA3型(マシャド・ジョセフ病)では年間1.61点、SCA6型では年間1.3点程度(本邦の調査)、日本人に多いSCA31型では年間0.8点程度(長野県での追跡調査)とされ、この順に進行が緩やかになる傾向が示されています。
ただし、これらはあくまで研究で報告された平均値です。個人差の大きさについては次の段落で詳しくお伝えしますが、それはこのSARAスコアの数字にも同じように当てはまります。また、SARAスコアには「何点変化すれば意味のある変化といえるか」という基準(MCID)が確立されておらず、この数字だけで一人ひとりの経過の重さを判断することはできません。
ここまで病型ごとの数字をお伝えしましたが、脊髄小脳変性症は病型や進行速度の違い、そして一人ひとりの個体差によって、現れる症状や経過、予後が大きく変わる病気です。原因となる遺伝子のリピート数が同じであっても、同じ家系・同じ世代のご兄弟であっても、必ずしも同様の症状や進行経過をとるとは限らないことが、医学文献でも指摘されています。原因となる遺伝子の変化について詳しくは脊髄小脳変性症の原因と初期症状もご覧ください。ここでお伝えした数字は、あくまで報告されている目安としてご参考にしていただき、ご自身やご家族の経過を一律に決めつけないようにしていただければと思います。
〈院長資料待ち:型別(SCA3/6/31・DRPLA・MSA)の進行の速さ・予後の傾向についての臨床実感〉