標準治療のほかに治療法を探している方へ

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脊髄小脳変性症の治療法・最新治療

脊髄小脳変性症の治療法について説明する鍼灸師|院長 吉池 弘明

●更新 2026.07.22

脊髄小脳変性症の治療法|標準治療・新薬・最新治療のいま

脊髄小脳変性症の治療法について説明するイメージ

脊髄小脳変性症と診断されて半年が経ちます。今の治療を続けるだけでいいのか、それとも他に受けられる治療や新しい薬があるのか、正直よくわかっていません。

今どんな治療法があるのか、新薬の情報も含めて、整理して教えていただけないでしょうか。

長野県 H.T.さん

脊髄小脳変性症は、現在のところ病気そのものを根本から治す治療法は確立されていません。ですが、症状を和らげたり、進行に備えたりするための対症療法やリハビリテーションはあります。また、新しい薬の研究も国内外で進められています。

このページでは、現在受けられる標準治療の全体像と、新薬・治験の状況を整理してお伝えします。

院長 吉池 弘明

  • 脊髄小脳変性症の現在の治療法

    根本的に治す治療は今のところない、という前提

    脊髄小脳変性症は、多くのタイプで根本的に治す治療法(病気そのものの進行を止める治療)が、現在のところ確立されていません。まれな例外として、ビタミンEが単独で欠乏することで起こる「ビタミンE単独欠乏性運動失調症」というタイプでは、ビタミンEを大量に内服することで進行が止まり、劇的に改善することが知られていますが、これはごく一部の特殊なタイプに限られます。

    多くの方が受ける対症療法や薬物療法は、病気の進行そのものを止めるのではなく、日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)を維持・改善することを目的としています。

    対症療法・薬・リハビリの組み合わせが基本

    現在の標準治療は、大きく分けて「薬による対症療法」「リハビリテーション」「日常生活での工夫」を組み合わせて行うのが基本です。それぞれの症状に合わせて、薬で和らげられるものは薬で、体を動かすことで維持できる機能はリハビリで、という考え方です。

    大きく分けて「薬」「リハビリ」「日常生活の工夫」

    次の項目から、それぞれの内容を順にご紹介します。特にリハビリテーションは、現在もっとも有効なアプローチのひとつと位置づけられており、体を動かさないことで起こる機能低下(廃用症候群)を防ぐためにも大切です。

  • 薬による治療(セレジストなど)

    主に使われる薬とその狙い(進行を遅らせる・症状を和らげる)

    運動失調に対して代表的な薬が、経口のTRH(甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン)誘導体であるタルチレリン(セレジスト)です。小脳の神経伝達を活発にすることで運動失調を和らげると考えられている薬で、臨床試験では、一部のタイプ(オリーブ橋小脳萎縮症を中心とするタイプ)の患者さんの約20%に、運動失調の改善が見られたと報告されています。劇的に良くなるというよりも対症療法の域を出ませんが、試してみる価値はあると考えられている薬です。

    副作用は8.7%程度で報告されており、主なものは血液検査値の変化(甲状腺刺激ホルモンの増加や血圧上昇など)、吐き気や胃の不快感などの消化器症状、めまいや頭痛です。頻度は1%未満と低いものの、けいれんや悪性症候群、血小板減少、肝機能障害といった重い副作用の報告もあります。けいれんを起こす病気(てんかんなど)のある方や既往のある方、甲状腺の病気がある方、妊娠中または妊娠の可能性がある方は、服用できない、または特に慎重な判断が必要とされています。

    同じ系統の薬に、注射で使うプロチレリン酒石酸塩があります。注射薬のため週に2〜3回、あるいは連日の通院・入院が必要になり負担が大きいのが難点です。一方、タルチレリンは1日2回、自宅で内服できる薬で、作用の強さは注射薬の約100倍、効果の持続時間は約8倍とされています。実際には、症状が急に悪くなった際に注射薬で集中的に対応し、長期の療養には内服薬に切り替える、という使い分けが一般的です。

    このほか、症状に応じて、体のこわばり(パーキンソン症状)にはレボドパ製剤、立ちくらみ(起立性低血圧)にはドロキシドパなどの薬、排尿の困難には抗コリン薬やβ3作動薬、手足のつっぱり(痙縮)にはエペリゾンやチザニジン、バクロフェンなど、不随意な動きにはクロナゼパムやボツリヌス療法などが使われることがあります。どの薬が合うかは症状や体質によって異なるため、主治医と相談しながら決めていくことになります。

    セレジストが合わない・副作用で飲めない方も少なくない

    セレジストは体質や持病によっては使えない、あるいは使いにくい薬です。特に甲状腺の病気がある方は、この薬が甲状腺の働きを高める作用を持つため、服用が難しいことがあります。また、胃の不快感などの副作用で続けられない方もいらっしゃいます。「薬が合わない」「副作用で困っている」という場合は、自己判断で中止せず、まずは主治医にご相談ください。詳しくは治る確率余命と進行もあわせてご覧ください。

  • 新薬・最新治療・治験の状況

    開発中の新薬・最新治療の動向

    ステムカイマル(Stemchymal)——国内で承認申請中
    2026年6月24日、国内メーカーが、脊髄小脳変性症(SCA3型・SCA6型)における運動失調の進行抑制を目的として、この再生医療等製品の国内製造販売承認を申請したことを発表しました。健康な方から採取した間葉系幹細胞を使った製品で、2018年12月には希少疾病用再生医療等製品にも指定されています。優先審査の対象となっており、申請から9か月をめどに審査が行われる見込みで、順調に進めば2027年前半ごろに結論が出る可能性がありますが、現時点ではまだ審査中の段階であり、承認されたわけではありません

    トロリルゾール(troriluzole)——アメリカでは承認が見送られました
    海外では、脊髄小脳変性症の進行を遅らせる効果を検討する臨床試験がトロリルゾールという薬で行われていました。3年間の試験データでは、運動失調の進行速度が50〜70%遅くなった(期間にして1.5〜2.2年分に相当)という結果が報告されています。しかし2025年11月4日、アメリカ食品医薬品局(FDA)は、申請データの解析方法などに関する懸念を理由に、この薬の承認を見送る通知を出しました。効果を示すデータ自体は報告されているものの、審査当局が承認するには至らなかった、という事実です。数字だけを見て過度な期待を持たれないよう、この経緯もあわせてお伝えします。

    このように、脊髄小脳変性症に対する新しい薬の研究は国内外で進められていますが、2026年7月現在、脊髄小脳変性症に対してアメリカで正式に承認された薬はまだありません。今後の状況は変わる可能性があるため、最新の情報は主治医や公的な情報源でご確認ください。

    治験に参加するには(どこで・どうやって)

    新しい薬の治験(臨床試験)に関する情報は、国内では臨床研究情報ポータルサイト(UMIN臨床試験登録システムなど)で確認することができます。海外の情報については、ClinicalTrials.gov や世界保健機関(WHO)の国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)といったデータベースがあります。

    ただし治験には、対象となる病型や症状の程度など、参加できる条件が細かく決められており、ご本人だけで判断するのは難しい場合がほとんどです。治験への参加を考える場合は、まず主治医や神経内科の専門医にご相談されることをおすすめします。

    過度な期待は禁物だが、動きはある、というバランス

    新しい薬の情報は希望につながる一方で、期待しすぎると裏切られたときの落胆も大きくなります。ステムカイマルのように国内で審査が進んでいる薬がある一方、トロリルゾールのように有望と見られていた薬が承認に至らなかった例もあります。「もうすぐ効く薬ができる」と考えるのではなく、「研究は着実に進んでいる」という事実を、現在の標準治療とあわせて知っておいていただければと思います。

  • リハビリという治療

    リハビリも治療の柱のひとつ

    リハビリテーションは、脊髄小脳変性症の治療の中でも、現在もっとも有効なアプローチのひとつとされています。薬のように症状に直接働きかけるわけではありませんが、体を動かさないことで起こる二次的な機能低下(廃用症候群)を防ぎ、日常生活動作を維持・改善することを目的としています。

    診療ガイドライン(2018年版)では、集中的な理学療法は「強く推奨する」治療として位置づけられており、作業療法や言語聴覚療法についても同様に推奨されています。実際に、1日2時間・4週間の集中的な入院リハビリテーションを行った研究では、運動失調の重症度を評価するスコアや歩行速度、日常生活動作の指標が有意に改善したことが報告されています。こうした効果は、自宅での自主トレーニングを継続することで3か月から半年程度、一部の方では1年後も維持されたという報告もあります。

    さらに、2週間の集中的なリハビリの前後で脳のMRI画像を比較した研究では、運動に関わる脳の領域の灰白質の体積が増加していたことが確認されています。小脳そのものが変性していても、脳の他の部分がその働きを補おうとする力が、実際に起きていることを示す結果です。

    ※このリハビリテーションの効果に関する研究は、あくまでリハビリそのものについてのものであり、当院の鍼治療の効果を示すものではありません。詳しくは脊髄小脳変性症のリハビリテーションをご覧ください。

  • 標準治療で「思うような変化がない」と感じている方へ

    標準治療を続けても伸び悩む・セレジストが合わない方へ

    ここまでご紹介したように、脊髄小脳変性症の標準治療(対症療法の薬とリハビリテーション)は、症状を和らげたり、進行に備えたりするための大切な土台です。標準治療を続けながら、それに加えてできることを探している方、あるいはセレジストが体質的に合わない・副作用で続けられないという方もいらっしゃいます。当院では、そうした方に向けて、標準治療を否定するのではなく、別の角度から体に働きかける鍼治療という選択肢もご紹介しています。

    体の機能に別の角度から働きかけるという選択肢

    当院の鍼治療は、まずサーモグラフィなどの機器を使って、自律神経の状態や血流など、体の状態を可視化することから始めます。そのうえで、状態に合わせたツボに鍼で刺激を与えていきます。

    タルチレリン(セレジスト)などのお薬は、神経伝達物質に働きかける西洋医学的なアプローチです。一方、鍼治療はツボや筋肉への物理的な刺激による東洋医学的なアプローチであり、作用のしくみが大きく異なります。そのため、お薬と鍼治療を同時に行うことによる、薬同士のような相互作用の心配はほとんどなく、主治医のもとで標準治療を続けながら並行して受けていただくことができます。

    「治す」でなく「使える機能を引き出す」当院の考え方

    当院が大切にしているのは、「病気そのものを治す」のではなく、「まだ使える体の機能を引き出す」という考え方です。

    小脳には、失われた機能を他の部分が補いながら働きを取り戻そうとする力があると考えられています。鍼で衰えた筋肉に刺激を与え、リハビリを組み合わせることで、話しやすさやバランス感覚の変化を経験される患者さんを多く見てきました。また、脊髄小脳変性症の患者さんは、小脳へ向かう血管(椎骨動脈)の血流が少ない方が多い印象があり、そこに着目して検査・治療することが、変化につながりやすいと考えています。

    ※これは当院の臨床経験に基づく考え方であり、前項でご紹介したリハビリテーションの研究とは別のものです。混同しないようお伝えしています。

    〈院長資料待ち:標準治療・セレジストで伸び悩んで来院した実例(匿名化)〉

    詳しくは治る確率(変化の事例)施術内容患者さんの声もあわせてご覧ください。

    ご相談はこちら

  • よくある質問

    脊髄小脳変性症の現在の治療法は?

    現在のところ、脊髄小脳変性症そのものを治す治療法は確立されていません。多くの場合、症状を和らげる薬(対症療法)とリハビリテーションを組み合わせて、日常生活動作を維持・改善することを目指します。

    効く薬はありますか?

    運動失調に対しては、タルチレリン(セレジスト)という飲み薬がよく使われます。臨床試験では一部のタイプの患者さんの約20%に改善が見られたと報告されていますが、効果には個人差があり、どなたにも同じように効くわけではありません。体質や持病によっては使えない場合もあるため、詳しくは主治医にご相談ください。

    新薬はいつから使えますか?

    2026年6月、国内メーカーが再生医療等製品「ステムカイマル」の製造販売承認を申請し、現在審査が行われています(優先審査で申請から9か月をめど)。まだ審査中の段階で、承認時期は確定していません。海外では有望とされていた薬が2025年11月にアメリカの審査当局から承認を見送られた例もあり、現時点でアメリカで正式に承認された薬はまだありません。最新の状況は変わる可能性があるため、主治医や公的な情報源でご確認ください。

    治験はどこで受けられますか?

    国内の治験情報は、UMIN臨床試験登録システムなどの臨床研究情報ポータルサイトで調べることができます。ただし参加には細かい条件があるため、まずは主治医や神経内科の専門医にご相談されることをおすすめします。

    完治した人はいますか?

    「完治した」といえる例は確認されていません。詳しくは治る確率のページで、変化があった実例も含めて正直にお伝えしています。

    セレジストが合わない場合は?

    副作用や持病(甲状腺の病気など)でセレジストが使えない、続けられないという方は少なくありません。自己判断で中止せず、まずは主治医にご相談ください。そのうえで、標準治療に加えて何かできることを探している方には、鍼治療という別の角度からの選択肢もあります。

  • 院長 吉池 弘明

    私が書きました

    院長 吉池 弘明

    脊髄小脳変性症の治療経験40年。

    医療用サーモグラフィを独自に導入し、のべ7万2000人の患者さんに鍼灸治療を行ってきた。

    サーモグラフィを用いた神経難病治療を専門に行い、自律神経・ストレス状態をデータから読み解き、患者様ひとりひとりに合わせた治療を提供している。

  • 参考文献

脊髄小脳変性症の鍼灸外来

お医者様とは違った角度から検査をして鍼治療に活かしています。

脊髄小脳変性症の治療に取り組む 長野県 森上針灸整骨院スタッフ集合写真

西洋医学的に治療法が確立されていないような難病や、保険医療で良くならなかった患者様、お薬の副作用でかえってお体を壊してしまった患者様を専門に治療する鍼灸整骨院です。お医者様とは違った角度から検査をして、鍼治療をしています。初診では十分な時間を取って患者様の問診をするので、お困りのことがあったらご相談ください。