脊髄小脳変性症は治りますか?

結論として、現時点ではごく一部の例外を除き、脊髄小脳変性症(SCD)を完全に「治す(根本的治療)」方法はまだ確立されていません

しかし、決して治療法がないわけではなく、現在の症状を和らげる「対症療法」や身体機能を長く保つための「リハビリテーション」を組み合わせることで、生活の質(QOL)を高く保ち、前向きに生活していくことは十分に可能です。

さらに、一部の特定の病型では進行を止める治療が存在し、将来に向けた最先端の根本治療の研究も猛スピードで進んでいます。現在の状況と今後の展望について詳しく解説します。

参考文献

  • 『神経難病のすべて―症状・診断から最先端治療、福祉の実際まで』
    (編者: 阿部康二/出版社: 新興医学出版社/発行年: 2007年)
  • 『脊髄小脳変性症のすべて』
    (編者: 阿部康二/出版社: 新興医学出版社/発行年: 2007年)

1. 例外として「治せる(進行を止められる)」病型もある

脊髄小脳変性症のなかには、原因物質やメカニズムが特定されており、それを取り除くことで症状の進行を止めたり改善したりできるタイプが少数ですが存在します。

1-1. ビタミンE単独欠乏性運動失調症(AVED)

遺伝性SCDの中で、現在唯一の根本的な治療法がある病気です。大量のビタミンEを内服して補充することで、症状の進行を完全に停めることができます。

1-2. 自己免疫性小脳萎縮症

孤発性(非遺伝性)のなかで、橋本脳症など自己免疫の異常が原因で小脳が障害されるタイプです。ステロイドや免疫グロブリンの大量静注といった免疫治療を行うことで、小脳の神経細胞(プルキンエ細胞)が不可逆的なダメージを受ける前であれば、症状の著明な改善や進行の抑制が可能です。

参考文献

  • 『脊髄小脳変性症マニュアル決定版!』
    (編集: 西澤正豊/出版社: 中山書店/発行年: 2015年)

2. 現在の治療の基本(対症療法とリハビリテーション)

根本治療がない大部分のSCDにおいては、以下の2本柱で症状をコントロールし、長く良い状態を保つことを目指します。また、最近で鍼治療の効果が注目されています。

2-1. 薬物療法(対症療法)

病気の進行そのものを止めるわけではありませんが、ふらつきや呂律の回りにくさといった「小脳症状」に対しては、脳の神経伝達を活性化させるTRH製剤(セレジスト内服薬、ヒルトニン注射薬)が使われます。また、足のつっぱり(痙縮)を和らげる筋弛緩薬、体の固さ(パーキンソン症状)に対するL-dopa製剤、立ちくらみや排尿障害などの自律神経症状を改善する薬など、現れている随伴症状に合わせて薬を細かく調整します。

2-2. リハビリテーション

お薬と同等かそれ以上に重要なのがリハビリです。脳には代償機能(学習して別のネットワークを作る力)があるため、積極的に運動を行うことで失われた機能を補うことができます。近年の大規模な研究では、バランス訓練や歩行訓練などの「短期集中リハビリテーション」を4週間行うことで運動失調や歩行速度が明確に改善し、その効果が半年近く持続することが実証されています。

鍼灸治療

私達は、40年前から脊髄小脳変性症の鍼治療に取り組んできました。サーモブラフィで筋緊張に異常があるインナーマッスルを探して鍼治療をすることで、運動失調や、手足の測定障害が改善され、症状の進行を巻き戻したり。緩やかにすることができています。一般的な鍼灸院では、脊髄症小脳変性症のさまざまな痛みや、不快な症状を取り除くことで生活の質を維持する取り組みをされている先生が多いです。

参考文献

  • 『すべてわかる神経難病医療』
    (監修: 西澤正豊/出版社: 日本プランニングセンター/発行年: 2015年)

3. 将来実現が期待される「根本治療」の研究

現在、世界中で「なぜ病気が起きるのか」が遺伝子や分子のレベルで解明されており、病気の進行そのものを食い止める「病態抑止療法(根本治療)」の開発が実用化の一歩手前まで来ています。

3-1. 核酸医薬(ASOやRNA干渉など)

遺伝性SCDの多く(SCA1、SCA3、SCA6など)において、原因となる異常なタンパク質が作られるのを遺伝子レベルで直接ブロックしてしまう最先端の治療法です。

3-2. ゲノム編集(CRISPR/Cas9)

異常な遺伝子のDNA配列そのものを正確に切断・修復し、病気の原因を根本から取り除く画期的な技術として研究が進んでいます。

3-3. 間葉系幹細胞移植治療(再生医療)

患者さんの骨髄や脂肪などから採取した幹細胞を点滴などで移植する治療です。神経を保護する物質を分泌したり、炎症を抑えたりすることで、多系統萎縮症(MSA)や遺伝性SCAの進行を抑える効果が臨床試験で報告されており、日本国内でも承認に向けた動きが進んでいます。

参考文献

『脳神経内科 Vol .103 No.2 特集Ⅱ 脊髄小脳変性症・多系統萎縮症』
(出版社: 科学評論社/発行年:2025年)

まとめ

現在は「病気を完全に治す薬」が完成するのを待ちながら、今ある症状をお薬やリハビリ(鍼灸などの非薬物療法も含む)で上手にコントロールし、合併症(転倒による骨折や誤嚥性肺炎など)を防いでいくことが最大の治療戦略となります。

原因遺伝子やメカニズムが解明されてきたことで、神経内科の専門医の間でも「根本治療の道は遠くない将来に必ず開ける、今はまさに『夜明け前』である」と確信をもって語られています。

参考文献

  • 『MEDICAL REHABILITATION No243』
    (出版社: 全日本病院出版会/発行年:2019年)
  • 『遺伝性脊髄小脳失調症の病態と治療展望』
    (出版社: 医学書院/発行年:2017年)

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当院について

当院院長 院長 吉池 弘明

森上鍼灸整骨院
院長 吉池 弘明

森上鍼灸治療では、西洋医学の代替医療として鍼灸治療に取り組んでいます。 顔面神経麻痺や突発性難聴の患者様には、臨床経験20年以上の鍼灸師がチームを組んで治療にあたります。

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